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2018年3月2日金曜日

~グラスアーケードの中を飛ぶ少女~


星を想う場所にて
~グラスアーケードの中を飛ぶ少女~

ある日、杖をついた化石博士が女の子に教えてくれました。
臆病な光や、もろく弱いものは、
そうっと大切に扱わないといけないことを。

新月の夜に砂浜に行くといいと聞いて、
女の子は早速計画を立て光の少ない、風のない夜に、
砂浜に行くことにしました。
火の玉がゆらゆらと海面を照らし始める頃、
砂浜も不規則にぼんやり光り出すので、
女の子はサンゴ礁の欠片を探し始めました。

ちょうど月と太陽がぴったりと重なったその時、
たちまち鞄から光りが漏れ、砂浜も一面白い光りを放ち出しました。
それは、海の中で密やかに暮らしていた面影を残したままの、
美しいサンゴ礁の残像でした。
白い光りの中にポツンと針を刺したような場所を見つけると、
女の子はそろそろと近寄って行きました。
それは青い光を放つサンゴ礁でした。
女の子は両手でそうっと慎重にすくい上げ、
周りの煌びやかな光と明らかに違う、
透き通るような、青く繊細な光をまじまじと見つめました。
凛とした光線は放射状に放たれ、
氷のように美しいその眩さにしばらく見惚れていると、
なんだかどこかで見たことがあるような気がしてきました。

ふと、あのガラスの目を思い出しました。
女の子は、手の中の収めようとしたその光を
そっと白い光の群れの中に戻しました。
「君は、ここにいた方が綺麗だよ。」

翌日、女の子は、ガラスの目をした鳥に手紙を書きました。
朝焼けにあいさつをしに行くと、波にお願いをしました。
それから手紙を丁寧に畳み、
サンゴ礁の砂つぶと一緒に瓶に詰めて海に流しました。
10日後にお返事の手紙がやってきました。
「女の子へ
今日は、南の夜空の星をずっと数えていたよ。
でも数え切れなくて、しばらくぼんやり見ていたら、
おぼつかない光たちが、白から紺碧に変わるのを何度も繰り返していて、
まるで小さな花が清流に浮いているように、ゆらめいて見えたんだ。
綺麗な花畑だったよ。
多分、君の見たものもそうだね。
地も海も空もほんとは同じ、
君の目も僕の目も同じようにね。
鳥」

女の子は、それから、欲しかったものがなんだったのか、
探していたものはなんだったのか、
いつの間にか忘れてしまいました。
遠くを眺めては、あのガラスの目が教えてくれるような気がしています。
だからもう、ひとりぼっちで寂しいこともありません。

時々、女の子は夢の中でグラスアーケードの森の中を飛んでいます。

どこまでも青い、

海を見に行くために。


~地平線を歩き続けていた少女~


深く濃い青空の下。

波の音を聴きながら仰向けに寝転んで、
女の子は、雲の行方を黒目で追っていました。
君はどこにいくの...
ふと、うっすらとした遠い昔の記憶が目の奥に浮かびました。
そんな、真夏の日差しが強い日のことです。

星を想う場所にて
~地平線を歩き続けていた少女~

女の子は砂の上で、ずっと下を向いて何かを探していたんです。
でも何を拾っても鞄にしまう前にホロホロと砕けてしまって、
時々鞄の中を覗いてみるんですが、粉々の砂つぶばかり。
いつになっても、何度夜を越えても、満足することがなかったんです。
それはもろくて弱いサンゴ礁の欠片でした。
女の子は砂浜をうろうろと、何月もそのようなことをしていました。
すると、ある日
女の子の島にガラスの目をした渡り鳥がやってきて、言いました。
「君はとても見えにくいものを探しているんだね。」
と、鳥は風に羽を滑らせながら、去ってしまいました。

ガラスの目をした鳥は、空を舞い一見優美なようにも見えましたが、
どこか心の深いところに、水溜りを浮かべているようにも見えました。
渡り鳥なのに一人で誰も知らないこんな島にやって来て、
いったい何を探しているのか、女の子は問えませんでした。
でも、鳥は途方にくれている女の子に何度か目線を届けてきては、
その透明などこまでも深く青いガラスの中に、
不思議な島を見せてくれました。
それは何月もの月日をかけてきた氷のように、
澄み切った青いガラスの島でした。
空の中で、一際浮いたその輝きに女の子はしばらく見惚れていました。

憧れに似たような気持ちでその光を追っていたら、
するすると円を描きながら旋回して、鳥は降りてきました。
「群れを離れて、長いこと青い花を探していたら、
いつしか涙がガラスのように固まってしまった。」
と言い、女の子の周りをシュルシュルと回りながら、
涙を吹き飛ばしてくれました。

風を自由に操りながら、高いところまで行ってしまった鳥に、聞きました。
「私も、あなたみたいになれるかな。」
鳥は答えました。
「なれるよ。だって君の目も、僕とおんなじ色だからね。」