星を想う場所にて
~グラスアーケードの中を飛ぶ少女~
ある日、杖をついた化石博士が女の子に教えてくれました。
臆病な光や、もろく弱いものは、
そうっと大切に扱わないといけないことを。
新月の夜に砂浜に行くといいと聞いて、
女の子は早速計画を立て光の少ない、風のない夜に、
砂浜に行くことにしました。
火の玉がゆらゆらと海面を照らし始める頃、
砂浜も不規則にぼんやり光り出すので、
女の子はサンゴ礁の欠片を探し始めました。
ちょうど月と太陽がぴったりと重なったその時、
たちまち鞄から光りが漏れ、砂浜も一面白い光りを放ち出しました。
それは、海の中で密やかに暮らしていた面影を残したままの、
美しいサンゴ礁の残像でした。
白い光りの中にポツンと針を刺したような場所を見つけると、
女の子はそろそろと近寄って行きました。
それは青い光を放つサンゴ礁でした。
女の子は両手でそうっと慎重にすくい上げ、
周りの煌びやかな光と明らかに違う、
透き通るような、青く繊細な光をまじまじと見つめました。
凛とした光線は放射状に放たれ、
氷のように美しいその眩さにしばらく見惚れていると、
なんだかどこかで見たことがあるような気がしてきました。
ふと、あのガラスの目を思い出しました。
女の子は、手の中の収めようとしたその光を
そっと白い光の群れの中に戻しました。
「君は、ここにいた方が綺麗だよ。」
翌日、女の子は、ガラスの目をした鳥に手紙を書きました。
朝焼けにあいさつをしに行くと、波にお願いをしました。
それから手紙を丁寧に畳み、
サンゴ礁の砂つぶと一緒に瓶に詰めて海に流しました。
10日後にお返事の手紙がやってきました。
「女の子へ
今日は、南の夜空の星をずっと数えていたよ。
でも数え切れなくて、しばらくぼんやり見ていたら、
おぼつかない光たちが、白から紺碧に変わるのを何度も繰り返していて、
まるで小さな花が清流に浮いているように、ゆらめいて見えたんだ。
綺麗な花畑だったよ。
多分、君の見たものもそうだね。
地も海も空もほんとは同じ、
君の目も僕の目も同じようにね。
鳥」
女の子は、それから、欲しかったものがなんだったのか、
探していたものはなんだったのか、
いつの間にか忘れてしまいました。
遠くを眺めては、あのガラスの目が教えてくれるような気がしています。
だからもう、ひとりぼっちで寂しいこともありません。
時々、女の子は夢の中でグラスアーケードの森の中を飛んでいます。
どこまでも青い、
海を見に行くために。