2015年12月12日土曜日

あの匂い


「あの匂い」


あの匂いだ

小さい頃知らないうちに嗅いでいた匂いは

なんだったんだろう

今薄い霧をくぐり抜けながら
時々とびきりの贈り物が
舞い込んでくるんじゃないだろうかと
期待して風を待っています

とても早く
押し合いもせず

それは一瞬のうちに現れて

私を深い森や高速道路のネオンライト
淹れたての珈琲の側に連れて行ってくれる

それから大きすぎるダイニングテーブルに
腰掛ける小さな私

昼の眩しい光の中で病院に行ったこと

ガラス張りの長い廊下

反射する光に映る私の目の中に私がいる
私が私を見つめているのずっと

フィルムのシャッターが降りて
明るい広い庭が見えた

そしたらまるでここは知らない国みたいで
そこで打つ注射はなぜだかちょっぴり痺れて

不思議

気持ちよく感じて

あの匂い