「あの匂い」
あの匂いだ
小さい頃知らないうちに嗅いでいた匂いは
なんだったんだろう
今薄い霧をくぐり抜けながら
時々とびきりの贈り物が
舞い込んでくるんじゃないだろうかと
期待して風を待っています
とても早く
押し合いもせず
それは一瞬のうちに現れて
私を深い森や高速道路のネオンライト
淹れたての珈琲の側に連れて行ってくれる
それから大きすぎるダイニングテーブルに
腰掛ける小さな私
昼の眩しい光の中で病院に行ったこと
ガラス張りの長い廊下
反射する光に映る私の目の中に私がいる
私が私を見つめているのずっと
フィルムのシャッターが降りて
明るい広い庭が見えた
そしたらまるでここは知らない国みたいで
そこで打つ注射はなぜだかちょっぴり痺れて
不思議
気持ちよく感じて
あの匂い